黄砂とともに飛来する放射性セシウム(137Cs) H19(2007)
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result24/result24_68.html
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農業環境技術研究所> 刊行物> 研究成果情報> 平成19年度 (第24集)
主要研究成果 24
黄砂とともに飛来する放射性セシウム(137Cs)
[要約]日本における137Cs大気降下量の変動に、黄砂現象が強く関与しています。顕著な降下が認められた事例について調査したところ、137Csを含む砂塵の主要な起源は大陸の草原域であるとわかりました。
[背景と目的]137Csは半減期が約30年と長寿命の人工放射性核種で、公衆被曝の原因になっています。近年その大気降下量は低い水準で推移していますが、春季にピークが現れるという特徴が認められ、このことから黄砂現象の関与が考えられています。そこで137Csを含む砂塵の起源および輸送過程の解明を目的としました。
[成果の内容] 2002年3月には、青森や新潟など北日本や日本海側の複数地点で、チェルノブイリ原発事故以来最大となる137Cs大気降下量が記録されました(図1)。この時に浮遊粒子状物質(SPM)濃度の上昇も観測されており、砂塵の飛来が降下量増大の原因であったと推定されます。この事例では、同時期に大陸の草原域において砂塵の発生が顕著でした(図2)。
そこで中国北部の草原(図3)を対象に現地調査を実施したところ、深さ2cmまでの表土から比較的高濃度の137Csが検出されました(表)。こうした土壌中の分布は、降水量が少ないため137Csの下方への浸透が遅いこと、草原では植生被覆により表土の侵食が抑制され137Csの減損も小さいことから説明できます。また土壌中137Cs蓄積量と年間降水量の間に正の相関が認められたことから、この137Csは特定の核実験場や施設からの放出物ではなく、1980年代以前のグローバルフォールアウト(地球規模の放射性降下物)に由来することが判明しました。
大陸の草原では最近、気候変動や人為による砂漠化が進行しています。2001年から2002年にかけて中国北部は深刻な干ばつ条件下にありました。このため植生被覆が脆弱化し、2002年の春季には137Csを含む砂塵の発生が顕著になったと考えられます。
以上の成果は大気中137Csの主要な起源を特定したもので、農業環境への負荷となる137Cs降下の、将来の水準を予測する上で役立ちます。
本研究は文部科学省科研費「黄砂に含まれる放射性セシウムの起源推定」による成果です。
リサーチプロジェクト名:化学分析・モニタリングリサーチプロジェクト 研究担当者:土壌環境研究領域 藤原英司 発表論文等:Fujiwara et al., Sci. Tot. Environ., 384: 306-315 (2007)
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