Sr-90測定に関するまとめ

品川区の学校給食の放射性ストロンチウムを計測する動きは本当に快挙だと思います。
品川区の区民のみなさんの地道なご尽力に心から敬意を表します。

記念して^^)
Sr-90関連、自分のメモ用にちょっと整理しました。
(誤記等お気づきの点ございましたらお手数ですがお知らせください。)

■Sr-90関連ニュース

・2011.7横浜市のマンション屋上からストロンチウム90が検出されて話題になった。(*1)
 測定結果は、Sr-90 : 195 [Bq/kg]
・測定者は、民間機関「同位体研究所」。3M(スリーエム)社製RadDisk-Srを使用。
・3M社製RadDisk-Srを用いた測定では、土壌検査の場合、Pb-210の混入を回避できない恐れがある。(*4)
文部科学省は、この横浜マンションの民間機関の測定結果に対して、(同 一検体の検証はせずに)世田谷区の土壌の検査を別の測定機関(日本分析センター)で行った。
・測定方法は、RadDisk-Srではなく、放射平衡を使う従 来法(*5)。
その結果、「Sr-89は検出されず、Sr-90は、最大でも1.1Bq/kgであった」ことから、「Sr-89が検出されないので、福島 第一原子力発電所の事故に伴い、新たに沈着したとは言えない。」「事故発生前からSr-90:〜30Bq/kgは範囲内」とコメントした。
文部科学省ホームページ:平成23年11月24日)(*6)
・しかし、世田谷区で2011年3月に「都立産業技術研究センターで大気を採取し、浮遊物質の詳細検査」した結果から、Sr-89が検出された。このため、文部科学省は、「ストロンチウム89は半減期が50日と短いため、原発事故由来とみられる。」とコメントした。
(読売新聞:2011年12月26日)(*7)
放射能測定のプロフェッショナル、東京大学の小豆川氏が従来法(放射平衡を待ってY-90のベータ線量で定量する方法)を使って、この問題に決着を付けた。Sr-90は、85 Bq/kg(Yokohama)、35 Bq/kg (Kashiwa)だった。(*2)(*3)
・以上をまとめると、土壌中のSr-90をスリーエム社のラドディスク(商品名エムポア)を使って測定すると放射性鉛210(Pb-210)を放射性セシウム90(Sr-90)として誤認する可能性があるが、「福島第一原発事故により横浜市までSr-90が飛んできた」ことは間違い無いと言える。

■現在の測定体制

水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/kekka.html

水産庁が海洋生物のSr調査を定期的にやっている。ただし、その点数は非常に限られている。最新の一覧表は以下のとおり。
[H26.3.13 更新]
http://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/pdf/result_strontium_140313.pdf
※過去の最大濃度は、#10 シロメバル H24.3.9
Sr-90:1.2、Sr-89:0.45、Cs-134:380、Cs-137:580 [Bq/kg]

・民間機関
北海道の民間企業「ホワイトフード」社が導入して食品に含まれるSr-90の測定を行っている。
http://store.shopping.yahoo.co.jp/whitefood/sr90.html

・市民活動
2013年7月に採取した東京電力福島第一原子力発電所構内の観測井戸水から500万Bq/kgのSr-90が検出された。(*8)
これを受けて「豊かな三陸の海を守る会」他団体が、 平成26年2月28日 安倍総理大臣に要請書を出した。(*9)
ストロンチウム90に係る福島周辺海域の調査と水産食品の摂取制限濃度制定を求めます」

・品川区の動き (New!)
品川区で、学校給食の放射性ストロンチウムの濃度測定が始まるとのことです。
http://yashiochildren.wordpress.com/
http://yashiochildren.wordpress.com/2014/03/28/品川区!全国で始めて!!給食食材検査にストロ/

「1校あたり年に2回はセシウム検査、1回はストロンチウム検査が行われるようです。」
「検出下限値については、極限まで下げて欲しいと検査機関へ交渉して下さっています!」
twitter:
https://twitter.com/gurannymama/status/449443268665671680


補足)3M RadDisk と 3M エムポア
3M のStrontium RAD Disks 商品名 "Empore"  エムポア
http://solutions.3m.com/wps/portal/3M/en_US/Empore/extraction/products/disks/product-listing/
http://solutions.3m.com/3MContentRetrievalAPI/BlobServlet?lmd=1269603967000&assetType=MMM_Image&locale=en_US&blobAttribute=ImageFile&fallback=true&univid=1258564467509&version=current

※ホワイトフードの機種は、3Mエムポアとかいてありますので、このまとめにおいて、横浜マンションで検出された最初の測定方法(同位体研究所の)RadDisk-Srと恐らく同じ測定方法のようです。

※初出(facebook *10)に、小豆川先生からコメントを頂きました。RadDisk法でも「食品系なら何とかいけるかな...とは思いますが、」とのことです。
同位体研究所が自ら解説していますが、Pb-210を含む土壌などはRadDiskは苦手のようです。

参考資料)
(*1)横浜でストロンチウム検出 100キロ圏外では初
2011年10月12日3時32分 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201110110626.html

(*2)小豆川先生の論文
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0057760

(*3) 
https://twitter.com/ichinoseshu/status/448687364055896064
岩波書店科学Apr.2014 vol.84 No.4 pp0373-0377 小豆川勝見氏(1) 2011年横浜マンション屋上で検出されたSr-90定量にてPb-210が一部混入していた問題、(2) 2013年福島第一原発内の地下水観測孔の全ベータ放射能の数え落とし問題を解説。

(*4)
同位体研究所発表 111125
固相抽出法による放射性ストロンチウムの分析に関する発表
http://www.radio-isotope.jp/_src/sc242/Sr9091AA92E8_94AD955C111125.pdf

(*5)
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/pdf_series_index.html
放射性ストロンチウム分析法
「全ベータ放射能測定法」
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/series/lib/No1.pdf

(*6)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/017/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/12/13/1314201_2_1.pdf
平成23年11月24日
横浜市が採取した堆積物及び堆積物の採取箇所の周辺土壌の核種分析の結果について
文部科学省 原子力災害対策支援本部 モニタリング班
福島第一原子力発電所の事故の影響を判断するために必要なストロンチウム89(半減期、50.53日)が検出されなかったことから、放射性ストロンチウムについては、福島第一原子力発電
所の事故に伴い、新たに沈着したとは言えない。」
「なお、今回検出されたストロンチウム90の測定値は、いずれも、事故発生前(平成11年度〜21年度)に全国で観測されたストロンチウム90の測定値(検出下限値〜30Bq/kg)の範囲内に入るレベルであった。」

(*7)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111226-OYT1T00825.htm
世田谷で原発由来ストロンチウム89…3月採取
文部科学省によると、ストロンチウム89が検出されるのは関東地方では初めて。」
ストロンチウム89は半減期が50日と短いため、原発事故由来とみられる。」
(読売新聞 2011年12月26日)

(*8)昨年7月採取した観測井戸水から500万Bq/kgのSr-90検出
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2014/02/post-e0df.html

(*9)「豊かな三陸の海を守る会」要請書
http://2011shinsai.info/node/5161

(*10) 初出
https://www.facebook.com/ichinoseshu/posts/609123749177459?stream_ref=10