「212ベクレルの服」 をどう解釈するか。 少し考察してみます。
出典:
http://ur2014.files.wordpress.com/2014/01/e382b8e383a3e383b3e38391e383bce381aee7b590e69e9ce38082.pdf
[ 放射性セシウム 212ベクレル ]
ベクレル(Bq)だけでの(重さkgの無い)放射能の表現を放射線の専門用語で 「数量」 と呼びます。
これに対して、放射能測定器が出力する数字の単位、Bq/kg は、
「放射性同位元素の濃度」と呼びます。
数量とは、 放射性物質の 総重量 に相当します。
例えば、
放射性セシウム 137 は、1グラムで 3.2テラ ベクレルです。(*)
つまり、核種(かくしゅ。例えば、放射性セシウム137は核種のひとつ)を決めると
「放射能の数量 ベクレル という数値は、その核種の 重量 を意味します。」
(
具体的には、
1g : 3.2 TBq = 3200 GBq = 3,200,000 MBq = 3,200,000,000 KBq = 3,200,000,000,000 Bq
よって、
1/1,000,000,000,000 g の時に 3.2 Bq となります。
)
整理すると、
食品放射能で使う
濃度 Bq/kg
という単位と
数量 Bq の関係は、
[ 濃度 x 重量 = 数量 ]
となります。
(*)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/11/post-b32f.html
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ベクレルは重さに相当する。
そう言われてもまだピンと来ないと想います。
そこで、大きさ をイメージしましょう。
放射性セシウム137の粒がここにあるとします。
直径は、1マイクロメートル。
髪の毛が、直径 70マイクロメートル。
なので、髪の毛の1/70の大きさの
放射性セシウム137があったとします。
これの放射能を計算することができます。
(たまたまですが、)
こちらも、3.2ベクレルとなります。(*)
(*)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/06/post-5622.html
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実際に、2011年3月12〜23日の間に大気に飛び出し、半径300km以上も漂い、降下した 放射性セシウムの粒は、つくばの研究所で、4月の間に実際に計測されました。
平均の直径は、0.2〜0.7マイクロメートルだったと報告されています。(*)
このエアロゾルの中身が、100%放射性セシウムの結晶では無いとしても、
ひとつぶの放射性セシウムの粒子が、1ケタ程度のベクレル値(=数量)である。というイメージは実体を掴んでいると想います。
(*)
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20120731/nr20120731.html
○●○●○
さて、ジャンバーに戻ります。
放射性セシウムの1粒を約3ベクレルと仮定して、212ベクレルのジャンバーには、何粒の放射性セシウムがくっついているか。
212/3=約70粒。
こんな、とらえ方を私はみなさんにお伝えしています。
なんとなく、具体的に 「敵」 の姿が見えてきませんか?^^)
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さて次に、これら70粒の放射性セシウムを含んだ粒々は今どこにどうしているかです。
そしてどのようにして服にくっついたのか。
昨年秋に、福島の水源域の山林の土壌を深さ方向に調べ、事故後2年経過したが、放射性セシウムは土壌の表層に留まっている、ことが報告されていました。
「放射性セシウムは、深さ5cmよりも 潜っていない。」
この発表は、「地下水汚染の恐れは低い」と安心させるために発信された節があります。
しかし、逆に考えれば、関東に 1平方メートルあたり、約2〜3万ベクレル降下した放射性セシウムにおいても、
土壌地帯では、表層5cm未満に留まっている。
という仮説を支持する根拠にもなります。
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もしかりに、1平方メートルあたり、3万ベクル降下した。(*1)
としますと、およそ、放射性セシウムが原因で、その場所の空間線量率が、
約 0.1μSv/h(毎時0.1マイクローベルト)上昇します。(*2)
これは、関東の東部が相当します。
1平方メートルあたり、3万ベクル降下。
これは、言い換えると、
1平方センチメートルあたり、3ベクレル降下。
となります。
つまり、方眼紙の1cm かける 1cm の四角い面積の中に、
3ベクレル つまり、直径1μmのセシウムの粒が ひとつ
もれなく 落ちている ということになります。
2011年3月23日以降に、
関東の土地で、親指で、地面を突き刺せば、
平均すると、一粒の 放射性セシウムが指にくっつく。
そんなイメージです。
(*1)
http://d.hatena.ne.jp/scanner/20131102/1383401106
新聞記事「原発事故で全国各地に降ったセシウムの量」の表の見方 入門編。
(*2)
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/05/425-bqkg-svh-81.html
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2013年3月の10日に、関東には春一番の強い嵐が吹き荒れました。
砂塵が舞い、遠くの見通しがきかないほどでした。
当日の報道は、 中国から飛んでくるPM2.5の報道一色でした。(*1)
しかし、埼玉県草加市にて、市民測定所が、舞っている粒子のみを集めて、
放射能を計測したところ、濃度は、4000Bq/kgを超える値でした。(*2)
放射性セシウムには、2つの核種があります。
放射性セシウム134と放射性セシウム137です。
放射性セシウム134は半減期が2年のため
134と137の比率を測ることで、福島原発事故由来かどうかを
判定することができます。
空を舞っていた砂塵の放射性セシウムは、その殆どが、福島原発事故由来でした。
つまり、関東の土壌の表層には、濃度、4000Bq/kg を超える砂塵が有ります。
(*1)
http://togetter.com/li/467994
(*2)
http://www.best-worst.net/news_azrUmhARxW.html
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1平方センチメートルあたり3ベクレルのセシウムの粒がひとつ落ちている。
ということと、
濃度、4000Bq/kg を超える砂塵が有ることの関連づけはどうなるのか。
良く言われる式に以下の式があります。
[ベクレル/平方メートル] = 65 x [ベクレル/kg]
この式は、ふたつの仮定があります。
1) 土壌の密度は、1.3グラム/cm^3 である。
2) 土壌の深さ方向に、5cmまで採取して、その採取土壌を測る。
平方メートルあたり、3万ベクレルの放射性セシウムが降下した。
つまり、65で割りますと、
400〜500Bq/kg の土壌汚染が発生したことになります。(*)
まだ、4000Bq/kg の砂塵と結びつきません。
全国の 2011年 土壌 放射性セシウム濃度
東京新宿は、500Bq/kgと測定されています。
http://www.kankyo-hoshano.go.jp/01/0101flash/01010522_2.html
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先の、福島の山林の土壌での放射性セシウムが、2年経過しても、5cmも潜っていない。ことが関係しています。
つまり、放射性セシウムは土壌の殆ど表面に集中している。
以下のグラフは、仮想ですが、
横軸は、深さ cm
縦軸は、放射性物質の濃度 x 1000Bq/kg のイメージ図です。
5cmまで、掘って 土壌の放射能濃度を測るという意味は、
表層の「濃い」部分も、
深いところの「薄い」部分もごっちゃにして平均する。
ということになります。
もし、表面だけをソッとそぎ取ったら、
この図からわかるように、より 濃い 汚染土壌だけを採取することになります。
春一番で、濃い(普通の土壌濃度の数倍以上の)砂塵が舞う仕組みは
以上のようなことだろうと推定しています。
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>2011年3月23日以降に、
>関東の土地で、親指で、地面を突き刺せば、
>平均すると、一粒の 放射性セシウムが指にくっつく。
>そんなイメージです。(*)
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補足)
降下した放射性セシウムの寸法は、土壌に捕らえられているために、
土壌の粒子のサイズになっていると考えられます。
PM2.5騒ぎの時に、
走査型電子顕微鏡写真が全国のTV画面を飾りました。
「 髪の毛は、70μm
PM2.5の粒子は、こんなに小さい。」
「中国からやってくる、PM2.5は、直径が2.5マイクロメートル以下の粒子だ」の騒ぎの時に、「インフルエンザ対策のマスクでも全く役に立たない。」と報道され、まるでガスマスクのようなマスクまでが売れ切れる騒ぎになりました。
「直径1マイクロメートルの放射性セシウムの粒子」
は、そのままで存在しているとすれば、
PM2.5の粒子よりも小さくて、マスクなんて
まったく無意味になりそうです。
しかし、そんなことはありません。
地下に浸透せずに表層に固着している理由は、
土壌の粒子の中にしっかりと捕らえられていると考えられるからです。
以上から、砂塵が舞う状態の時には、マスクをする。
頭に砂塵がつかないように、帽子をかぶる。
衣類も砂塵が付きにくい対策をする(ウィンドブレーカーなど)
外から帰ってきたら衣類をはたく。
などの対策でも、十分効果があると期待されます。
春一番まで、もう2ヶ月を切りました。
こころの準備はいいですか。
以上