ペトカウ効果を学ぼう
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2013/02/2011625-44b8.html
書籍 ラルフ・グロイブ/アーネスト・スターングラス「人間と環境への低レベル放射能の脅威」あけび書房(2011.6.25)
訳 肥田舜太郎/竹野内真理Ralph Graeub Ernest J Sternglass
The Petkau Effect
The devastating Effect of Nuclear Radiation on Human Health and eht Environment
日本国内で放射能測定所を立ち上げたオペレータが勉強するために(閉じた)facebookグループを運用しています。
そこで書いた記事をlogとして残します。
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#ペトカウ効果
書籍
ラルフ・グロイブ/アーネスト・スターングラス
「人間と環境への低レベル放射能の脅威」
あけび書房
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2013/02/2011625-44b8.html
高線量を短時間照射する場合よりも低線量を長時間照射する場合に積算照射量で5千倍、効果的に細胞膜を破壊する。
https://twitter.com/ichinoseshu/status/300181372591562752
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すこしづつ、「放射線概論」という第1種放射線取扱主任試験のためのテキストを読み進めています。
生物学のページには、放射線障害の中心は、核つまり、DNAへのダメージという観点で話が展開します。
こ のテキストでも、放射線により発生するラジカル(不対電子)が悪さをすることが障害のメカニズムの一つとしてリストされている。そして、高線量の場合は、 発生したラジカルの密度が高く、ラジカル同士が再結合して無毒化する確率が高くなる。しかし、低線量の場合は、放射線により発生するラジカルの寿命が長く なり、効果的にDNAを破壊する「希釈効果」という現象が書かれています。これを全ての第1種放射線取扱主任は学ぶ。(つまり専門家にはこのことは常識。)
でも、ペトカウ効果の内容は、「細胞膜の破壊」という点が異なる。
この事実はもっと共有されるべきだし、この実験の追試験をやってみる実験実習をどなたか企画して下さいませんか?
私はこの実験をやって自分の目で確かめてみたい。
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Kさん
・ゴフマン
・バンダジェフスキー
・スターングラスのペトカウ効果(肥田先生、竹野内さんの翻訳本)
の3冊を一応積ん読していましたが、
ペトカウ効果のp129-160だけでも集中的に知識を共有できると、この場に参加しているオペレータのみなさんにとって、有用だと判りました。
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Kさん>
元論文はこちらです
http://journals.lww.com/health-physics/Abstract/1972/03000/Effect_of_22Na__on_a_Phospholipid_Membrane.4.aspx

Effect of 22Na+ on a Phospholipid Membrane : Health Physics
journals.lww.com
Radioactive 22Na+ has been used to irradiate model phospholipid membranes. It was found that the membranes rupture after irradiation periods varying from 20 to 600 min, depending on the dose rate. It was further found that both the membrane duration and the absorbed dose at which the membrane rup...
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このペトカウ効果の理解には幾つか「峠」があると思います。
1.線量 [Sv] と照射時間 という実験の理解[物理と放射線医学]
2.ラジカルの挙動 [化学]
3.核(DNA)と細胞膜 [生物学]
4.免疫 [医学]
この場にはさまざまな専門家が集まっているので、頼りにしています。^^)
オペレータは、1.はおおよそ把握できているので、(BqやSvの意味)2.3.4.が局所的にでもシェア&理解できれば、私達の活動の意味づけや動機付けに関わってくるだろうと思います。
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まず、ラジカル について:
酸素分子 O2が還元されて電子が1つづつくっつくと次のような物質になります。
1)酸素(O2)
2)スーパーオキシドラジカル(O2-)
3)過酸化水素水(H2O2)
4)ヒドロキシラジカル(OH*)
5)水分子(H2O)
不対電子(ラジカル)が危険な物質です。
1)酸素(O2)
2)スーパーオキシドラジカル(O2-)
4)ヒドロキシラジカル(OH*)
の3つがラジカル。
特に
4)ヒドロキシラジカル(OH*)
が一番作用が強い。
蛇足:
電子を人間に例えると、ラジカルってのは、婚活中の独身のこと。
ラジカル同士がくっつくと夫婦になってラジカルじゃなくなる。
婚活中の独身は相棒を求めて活性化している。
ラジカルを独身に例えるのは邪道だけど、分かり易いかも知れない。ただ、人間には、婚活しない独身(活性化していない独身)も居るから、必ずしも異性を求めて活性化しているアナロジーはきついかも。。^^)
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あらすじだけざっと書きますので、どんどん突っ込んでください。
まずBqとは何か。
定義:1秒あたりに核崩壊を1回起こすと 1Bq
Bq=核崩壊/秒
核種によって1回の核崩壊ではき出す放射線
α線、β線、ガンマ線は異なる。
時間と核崩壊の回数の関係なので、
半減期
原子量
が判ると、1gの核種で、Bqを求めることが可能です。
例えば、Cs-137は、1グラムで、3.2テラBqです。
同様にCs-137の寸法が決まると重さが決まりBqが決まります。
Cs-137は、Φ0.7μmでおよそ1Bqです。
私達が現在「放射能」という言葉を使う時に、Bqと等価ですので、「放射線を出す能力」という本来の定義は、おいといて、
Bqとは、核種を決めると、重さである。と私は説明しています。
重さだと判ると、
放射性物質の濃度と数量は、
食塩の濃度と総量に例えが可能です。
料理を作る方は、脳卒中を起こさないように、食材中の食塩濃度(たとえば、味噌のしょっぱさ)と一食あたりの総量(食塩重量)を管理します。
同様に、放射性セシウムの濃度(Bq/kg)や、摂取量(濃度xkg)を考えることが可能です。
■補足
数学が得意な人は、半減期と原子数とモル数から核種1グラムあたりのBq数を求める際に参考にしてください。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/06/post-5622.html
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/11/post-b32f.html
放射性セシウム137は1グラムで3.21テラベクレル
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次にSv
シーベルト
Svは、
電離放射線(α線、β線、γ線など)が、生体に与える影響を数字で表すために生み出した指数。
物理量(質量、長さ、エネルギーなど)ではなく、
放射線で生体を叩く一連の実験手順とその結果の解釈手順といえます。
Svを直感的に理解できるのが、サーベイメータの校正作業です。
HORIBAのラディや、自治体が使っている日立アロカのTCS-172Bというシンチレーション式ガンマ線サーベイメータは、空間線量率 単位「μSv/h」を表示します。
このサーベイメータを製造している会社が、実際に何をやっているかを想像してみてください。
何をやっているか。
結構単純なことをやっています。
使っているのは、百万ベクレルのCs-137です。
この「標準線源」から、1メートル離れた位置に、サーベイメータを置き、値が、0.0927μSv/hとなるように、アンプなどの電子機器内部の倍率調整部分を微調整します。
この数字は、1cm等量線量率定数といって、アイソトープ手帳に核種毎のガンマ線の光子エネルギースペクトル(Cs-137なら、662keV)が掲載されている行の右の方に書いてあります。b
この1cmとは、生体(肉体)模型(%1)を作って、深さ1cmにセンサをおいて、そこにどのくらい放射線が到達したかを測る手順で得た指数。
他に、皮膚をターゲットにした70μmや、3mmの深さの指数もあります。
(1cm線量等量、3mm線量等量、70μm線量等量)
このSvの理解は、光源と照度の関係と同じです。
電球のような点光源が中央にあり、そこから1メートル離れた場所での照度を計算する場合、「照度は、距離の2乗に反比例する」
点光源に近づくと明るく、遠ざかると急激に暗くなる。という現象は、線源が一カ所に集中している場合は、この点光源と照度のアナロジーを活かすことができます。
(%1)生体(肉体)模型:
ICRU球 直径30cmの生体のダミー。
組成は、酸素:76.2%、C:11.1%、H:10.1%、N:2.6%、密度1
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Kさん>質問
「標準線源」から、0.8メートル離れた位置に、サーベイメータを置き、値が、0.0927μSv/hとなるように、アンプなどの電子機器内部の倍率調整部分を微調整するとどうなりますか?
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この実験系において、中央に置く標準線源の放射能値[Bq]と線源からサーベイメータまでの距離[m]と、測定される空間線量率[μSv/h]の関係は、以下の通りです。
・線源の放射能値に比例する。
・距離の2乗に反比例する。
定数は、
線源の放射能値:百万ベクレル
距離:1メートル
ですので、
距離が、0.8メートルであれば、
(1/0.8)^2=1.5625となるので、
1メートルのつもりで校正してしまうと、みかけの感度をにぶくすることになります。
例えば、1.56μSv/hが正しい値なのに、1μSv/hと表示するように校正してしまうことになります。
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同じ、1Bqでも、Cs-134は、Cs-137よりも、2.7倍 Svが強い。
http://imeasure.cocolog-nifty.com/isotope/2012/11/cs-134cs-137-02.html
Cs-134のガンマ線はCs-137の2.7倍、人体への影響が大きい
これが何故か?は、スペクトルを読むオペレータであれば、良い思考訓練です。^^)
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Isさん>
この7mSv/minという数字は高線量だから、もっと低線量ではどうようなのか?というつっこみがありますが、どうなんでしょうね。
確かに15.6Sv/minなどという強烈すぎる数値と比較すれば相対的には低いですが、実際的には高いですね。
もっともっと低線量だったら、どうなのかな、と。
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Isさん
0.01 mSv/min ( = 0.6 mSv/h)
という空間線量率は、
実験をするとすれば、コリメータを使って、平行光線にして、
均一照射するんでしょうね。
でも、例えば、実際の内部被ばくのプロセスを考えてみると、
細胞のサイズ(20μm)程度の至近距離にCs-137の粒が在るケースがありますよね。
安全見て例えば、距離を100μmと仮定します。
距離の効果は、
1mに対して、100μmは、1万分の一なので、
距離の二乗に反比例して、空間線量率は強くなるので、
1万x1万=1億倍(10^8)の強度となります。
だから、サーベイメータを校正する時の線源の放射能値:百万Bqが、1億分の1の0.01Bqであっても、
100μmの位置にサーベイメータを置き空間線量率を計測すれば、0.0927μSv/hですよね。
すると、
0.6 mSv/hになるには、0.6mSv/hは、600μSv/hなので、
(600/0.0927)x0.01Bq=64.7Bq
よって、65 Bqの粒が、細胞の側に居れば、 0.6 mSv/h=0.01 mSv/minになる。
まあ、以上の計算は幾つかの仮定があります。
仮定1)コリメータで照射された放射線の空間線量率と
細胞の近傍で点線源として放出される放射線による空間線量率が細胞に同じ作用をする。
だから、ペトカウ効果とい現象が再現実験により追試験され、間違いの無い事実だとしたら、後は、上記の仮定の検証をすれば、かなりのことがはっきりするんじゃないかな。。
横軸:メートル
縦軸:μSv/h
中心に100万BqのCs-137を置き、
1メートル離れた位置にガンマ線サーベイメータを置くと、
空間線量率は、0.0927μSv/hと表示されます。
これは、BqからSvへの換算の定義であり、
かつ、サーベイメータを校正する方法でもあります。
距離の二乗に反比例するので、この図に示すように、
距離が例えば、半分になると、強度は4倍。
1/4になると、強度は16倍で、1.48μSv/h。
1/10になると、強度は100倍で、9.27μSv/hとなり、グラフ上限値をはみ出してしまいます。
[このグラフの作成方法]
Mac-OSの入っているPCに Grapher という無料アプリが入っています。
y=0.0927*x^-2
と入力して描画したグラフが、このグラフです。
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ラジカルの補足。
ヒドロキシラジカルが登場する図。
発ガンのメカニズムの概説。
2011.6.22
http://www.ncc.go.jp/jp/shinsai/pdf/20110622_slide_02.pdf
page16の図が
放射線による直接作用と間接作用の説明。
間接作用にラジカルが作用する。
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(作成中)
なおこの議論に直接参加したい方は、お近くの市民測定所に立ち寄ってみてください。放射能測定したい食材(検体)を持参するとよりベター。
オペレータからより詳しい情報を貰えると思います。
http://shimin-sokutei.net/list/all.html
長野県は、現在6カ所に、市民測定所+民間測定所が運用されています。
一般の市民のみなさんが食材を持ち込んでも計測してくれます。
また、大町市に自治体が導入して稼働中です。
飯山市(?)でも市民測定所の動きが始まりました。
お問い合せは一ノ瀬までお気軽にどうぞ。