高野孟のINSIDER No.725 2014/03/31 プーチン=悪者論で済ませていいのか? ──ウクライナ/クリミア争乱の深層
はじめに
高野さんの8年前(2014年)の有料メルマガ文をまるまる転載するのは、本来ルール違反です。
すみません。
だけど。
日本語で世界情勢を長い期間(半世紀)分析し続けている方の言葉を今回届ける価値はあるし、
これをきっかけに、彼のメルマガの読者数が増えることを願って。
(現在病に伏せって、ご本人ではなくて共同執筆体制の形で運用しているようだけど、健康回復を願いつつ。)
もし当事者からクレームが来たらまるごと削除します。
- 1994年1月のNATO首脳会議で拡大方針を決め、その後、周知のように、
- 1999年に第1陣としてポーランド、チェコ、ハンガリーの3カ国、
- 1904年に第2陣としてバルト3国、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアの7カ国、
そして
-2009年にアルバニア、クロアチアの2カ国を加盟させてきた。
ウクライナを語るには、本当は、さらに長い長い物差しも必要である。
- 東スラブ人の最初の国家キエフ・ルーシから1100年、
- モンゴル支配から770 年、
- コサック国家建設から530 年、
- ロシア帝国の支配から360 年、
- 旧ソ連から100 年、
- ナチス占領から70年、
- フルシチョフによるクリミアのウクライナへの譲渡から60年、
- 旧ソ連邦崩壊でようやく独立を遂げて22年、
等々がすべて今に繋がっている。
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■■■ INSIDER No.725 2014/03/31 ■■■■■■■■
プーチン=悪者論で済ませていいのか?
──ウクライナ/クリミア争乱の深層
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東京新聞3月26日付に東京の79歳男性の「一方的ロシ
ア非難でいいのか」と題し
た投書が載っている。
▼「クリミア併合」を巡り、欧米諸国はロシアのプーチ
ン大統領への非難を強め、日本のメディアも一斉に非難
という主張はもっともだろう。ただ、ロシアを擁護する
わけではないが、今回の事態に至る発端が何だったの
か、冷静に振り返る必要もあるだろう。
▼今年2月、EU当局者らの仲介により、ヤヌコビッチ大
統領(当時)と野党代表との間で……政治危機回避でい
ったん合意した。にもかかわらず、野党勢力は武力衝突
の末に政権を倒し、矢継ぎ早に新政権を発足させた。
▼いかに腐敗にまみれた政権といえども……暴力的に合
かったか。日欧米でウクライナ暫定政権の正統性がほと
んど問われずにきたのは、不思議だ。……
その通りで、確かにプーチンのとった行動は賢明とは
言えないし、国際法違反であることも明白だが、ヤヌ
コビッチとそれを支持したロシアが悪者で、民主化勢力
=暫定政権側とそれを後押しした米欧は善良とする単純
な二元論ではこの事態を理解することはできない。日本
のマスコミは、2月22日のヤヌコビッチ政権崩壊と大統
領逃亡以降、27日のヤツェニク暫定政権発足と同時のロ
シア武装部隊のクリミア侵攻から3月16日のクリミア住
民投票へという直近1カ月余りの事態の急展開にばかり
照準を合わせているので、なおさら「悪いのはプーチン
だ」という論に傾きやすい。こういう時こそ、長短いろ
いろな物差しを当てて考えてみる必要がある。
●4カ月前まで遡ると
まず、4カ月前の反政府デモ勃発のところまで遡ろ
う。発端は、ヤヌコビッチ大統領がEU加盟の前提条件と
定を見送ると決定したことである。その日の午後にキエ
フの著名なジャーナリストが自身のフェースブックで
「22時30分に独立広場に集まろう。暖かい格好で、コー
ヒーと紅茶も忘れずに」と呼びかけ、実際に数百人が集
まって大統領の親露反欧姿勢に抗議した。このささやか
なデモが、たちまちのうちに数万人に膨れあがり、12月
に入ると毎週日曜日に10万人を超えるデモ隊が出て政府
の治安部隊と衝突を繰り返すようになり、1月19日には
角材や火焔瓶で“武装”した集団が暴徒化して警察車両
などに放火、それから4日間に一部では銃撃戦まで行わ
れて死者6人、負傷者1000人を出す惨事にまで発展し
た。
この間、政権側は、1月16日にデモ規制の新法を出し
てますます弾圧を強める一方、欧米首脳からの強い要請
に応えて、ヤヌコビッチが1月25日、最大野党「祖国」
幹部で元国会議長のヤツェニクを首相に、第2野党「ウ
ダル(パンチの意味)」党首で元世界ヘビー級王者のク
リチコを副首相にするとの妥協案を示したが、2人はあ
くまでヤヌコビッチの大統領辞任を求めて拒否した。こ
のため政局は行き詰まり、アザロフ首相率いる内閣は1
月28日、総辞職した。2月に入ると衝突は内戦と呼べる
ほどに激化し、18日には市民と治安部隊双方に銃撃によ
る7人ずつの死者が出た。その日バイデン米副大統領が
ヤヌコビッチに電話で、治安部隊の撤収と野党との対話
を要求したのを受けて、翌20日、ヤヌコビッチがクリチ
コと会談したが不調に終わる一方、この日街頭では94人
が死亡し900 人が負傷する最悪事態が現出、これでヤヌ
コビッチはついに持ちこたえられなくなった。
他方ロシアは、2月7日開幕のソチ冬季五輪を国際社
会から人質に取られた格好で身動きが出来ず、12月17日
巨額財政支援を行い、同国向けの天然ガスの価格を30%
引き下げることなどを発表、経済面でウクライナ国民を
なだめようとしたが、焼け石に水で終わった。五輪開幕
式では日本を除く主要国の首脳が揃ってボイコットして
ら承知しないぞ!」という脅迫的なメッセージを叩きつ
けた。
●市民デモが変質した訳
昨年11月21日以来の経過を振り返って異様に感じるこ
との第1は、たかだかEUとの貿易協定の調印見送り程度
の話で始まった穏やかなデモが、わずか2カ月のうちに
死者が出るような衝突にまで発展し、さらにその1カ月
後には政権が引っ繰り返るところまで行き着くというそ
のスピードである。
もちろん、貿易協定問題がきっかけとなって、長年の
ロシアへの政治的・経済的・文化的従属とその下での経
済破綻の進行への不満の鬱積に一気に火が着いたという
こともあるだろうし、それに対する政権側の過剰な弾圧
姿勢がさらに油を注いだということもあるだろう。
それにしても、現地からの初期の報道では、デモ参加
者の中心は組織されない一般市民で、会社員、医師、ア
リティ、宗教者など多種多様な人々の自発的な参加が目
立っていて、政党指導者やナショナリスト集団などはほ
とんど表に出ていないという報告がなされていた。とこ
ろがそれが12月中旬あたりを境にして一変し、上述「祖
国」や「ウダル」など親欧的な野党だけではなく、ウダ
ルに次ぐ第3野党の「スヴォボダ(自由)」を中心とす
る右翼民族派やネオナチ集団が次第に主導権を握り、市
民の怒りを利用して政権打倒の暴力革命へとリードして
いったように見える。
スヴォボダの党首は歴としたネオナチのチャグニボク
クライナ民族会議─ウクライナ自衛(UNA-UNSO)」「ト
リズブ(ウクライナ紋章の三叉の意味)」などの右翼団
体から構成される「右派セクター」という横断的な右翼
政治組織を作っている。彼らが共通して崇拝するのは、
攻した際、進んでナチ同盟者となってユダヤ人やポーラ
ンド人の虐殺しソ連と戦ったことで知られる「ウクライ
ナ民族主義者組織」の指導者ステパン・バンデラで、チ
ャグニボクらはウクライナの独立後、彼を名誉回復し
て“愛国者”と位置づけるよう運動を繰り広げてきた。
1月19日以降、銃撃による死者がデモ側と治安部隊の
双方に出始めたのは、このネオナチ集団が市民に狙撃手
を紛れ込ませて混乱を拡大しようとした挑発行為ではな
いかとの疑惑が出ている。3月5日にYouTube に公開さ
をした通話録音によると、同外相は「警察と市民の双方
を殺した狙撃手は抗議運動側の挑発者の雇ったもの」と
言い、遺体を検分した女性医師が写真を示しながら「双
方の死者ともが同じ弾丸で撃たれている」と証言したこ
とを伝えている。
★ https://www.youtube.com/watch?v=ZEgJ0oo3OA8#t=45
これはロシアの情報機関が盗聴して流したものに違い
ないが、同外相はこの通話が本物であることを認め、
「ただし新政権が雇った狙撃手と断定したわけではな
い」と付言した。
これを受けてロシアのラブロフ外相は8日、2月に起
きた反政府デモと警官隊の衝突時、市民と警官多数を射
殺した狙撃手の正体を全欧安保協力機構(OSCE)が調査
するよう要請した。欧米では、狙撃したのは政府側の治
安部隊に決まっているという調子で報道されてきた。
●米国による裏工作
第2に、この反体制デモを米国が積極的に支援してき
たことに注意を向ける必要がある。それが公然かつ本格
的になったのは昨年12月中旬で、米国務省のビクトリ
ア・ヌランド国務次官補(欧州・ユーラシア担当)が10
日キエフ入りし、野党指導者たちと会談し、また独立広
場に行ってデモ参加者にお菓子を配った。続いて14日に
ェニク、クリチコ、チャグニボクの3人と会談し、翌日
にはやはり独立広場にそのチャグニボクを伴ってデモ隊
を激励に行った。
ヌランドとマケインに共通するのは、親イスラエルの
ャグニボクと会談して記念写真まで撮らせているのはど
ういうことなのか、理解に苦しむが、まあ当時は市民デ
モに乗じて政権打倒まで持っていくのに、利用できる者
は誰でも利用しようということだったのだろう。これ以
降、野党指導者の下には米国のUSAID など政府機関や民
間財団から豊富な資金が注ぎ込まれることになった。
マケインは「共産主義の撲滅」「全世界に民主主義
を」といった冷戦時代そのままのイデオロギーの持ち主
で、これまでも昨年5月にはシリアを訪れて反政府軍の
幹部と面談し支援を表明、8月には米国がシリアを空爆
してアサド政権を崩壊させるべきだと強く主張した。他
方、ヌランドの夫はネオコンの代表的論客である歴史家
のロバート・ケーガン=米ブルッキングス研究所上席研
究員である。1997年にネオコンの巣窟と言われたシンク
タンク「アメリカ新世紀プロジェクト」を立ち上げ(マ
ケインもメンバー)、01年の9・11の1年前には米国が
地球的責任を果たすための軍備大増強を提唱する米防衛
再編計画を発表、その際にそれを短期間に実現するには
「新たな真珠湾攻撃のような破滅的な出来事」が起きる
ことが必要であるかのごとき一句を盛り込んだので、
後々「ネオコンによる9・11自作自演」説の論拠にされ
たりもした。
ものが国務省の政策を牛耳っているというのは驚きだ
が、彼らこそがロシアにとって死活的なウクライナの欧
州化を強引に推進しようとする張本人なのであって、彼
らの発想からすれば、ネオナチに資金を提供して親露政
権を崩壊に導くなど当然ということになる。
●ヌランドの秘密シナリオ
そのヌランドが12月のウクライナ訪問から帰国後に駐
ウクライナ米大使のジェフ・パイエトと交わした通話の
録音も2月7日にYouTube に公開されて、世界中で大き
な話題となったが、日本のメディアでは扱いは小さかっ
た。これを核心的事実として据えてウクライナ情勢を分
析すれば、冒頭に述べたような単純二元論に陥ることは
避けられそうに思うのだが、米国に遠慮しているのかロ
シア憎しで凝り固まっているのか、そういう論調はほと
んど現れなかった。
★ https://www.youtube.com/watch?v=MSxaa-67yGM
★BBCによる文字起こしと解説:
http://www.bbc.com/news/world-europe-26079957
米国務省も本物と渋々ながら事実と認めたこの会話
で、2人は次の政権の人事問題まで突っ込んで議論して
おり、実際に2月には彼らが言うとおりの暫定政権が成
立した。一部を仮訳要約する。
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ヌーランド(N)あなたはどう思う?
ハイアット(P)我々のゲームはもう始まっていると思
う。クリチコの存在が厄介で、彼が副首相になると[上
記、1月25日のヤヌコビッチ妥協案のことか?]まとま
るものもまとまらないから、早く彼の収まり所を判断し
ないと。ヤツェニュクに電話して、彼をこのシナリオの
中で適切な位置に据えることを言ったほうがい。
N そうね。私はクリチコは政権に入るべきでないと思
う。それは不必要なことだ。
P 彼には政権の外にいて政治のお勉強をしてもらうの
がいい。このプロセスを前進させるには、穏健民主派を
まとめていくことが大事だ。問題はチャグニボクとその
一党になるだろう。ヤヌコビッチはそのことも計算に入
れているだろうと思う。
N ヤツェニクは経済の経験があり、統治の経験もあ
る。彼にとってはクリチコとチャグニボクは外に置くこ
とが必要だ。クリチコがヤツェニュクのために働いて
も、あの程度ではうまくいかない。……彼ら4人が会談
した席でヤツェニクがなぜ彼がクリチコを入れたくない
かを説明する前に、我々が裏でやらないと。
*
N 国連の潘基文事務総長がロバート・セリー[ウクラ
イナ担当国連特使]をウクライナに派遣することに合意
した。この件をまとめるのに国連が手助けしてくれるの
はありがたい。EUなんてクソ食らえだ[このひと言を後
に彼女はEUに謝罪することになった]。
P 全くです。だから我々は指導者たちをくっつけるた
めに何とかしなければとやってきた。EUが動き出しても
ロシアが裏から潰すでしょう。……もう1つの問題は、
ヤヌコビッチに何らかの接触をすることだ。
N それについては、サリバン[副大統領安保補佐官]
が来てバイデン[副大統領]が手助けしてくれると言う
の。たぶん明日、彼に会って接着の詳細を話すわ。バイ
デンがそれを望んでいるので[これが2月18日のバイデ
ンの電話に繋がる?]。
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これについてBBC のジョナサン・マーカスは解説文
で、米国は表向き「ウクライナの将来を最終的に決める
のは国民だ」というようなことを言っているが、この記
録を見れば、米国が極めてはっきりしたアイディアを持
ってその目標達成のために奮闘していることが分かる、
と指摘している。また、米国は(いつものことだが)EU
の努力にフラストレーションを抱いていて、EUのように
ゲームを長引かせるのではなく、遥かに実践的な役割を
果たすことをはっきりと決断している、とも指摘してい
る。
実際、この通話の時点では大衆的に人気No.1で、5月
大統領選に出馬するのが確実と見られていたクリチコ
も、政権打倒には役立つけれども中に入れたら危険なチ
ャグニボクも、新政権の外に置いて親欧米派のヤツェニ
クがやりやすいように事を運んで米国の言うことを聞く
て、そのとおりの政権が出来た。
クリチコは29日のウダル党大会で、親欧米派の大統領
候補として急浮上しつつある企業家出身のポロシェンコ
議員を「民主勢力の統一候補」として支持し、自らはキ
エフ市長選に立候補することを発表した。ヤツェニク首
相の「祖国」は、かつてのオレンジ革命の寵児で今も党
首であるチモシェンコ元首相を立てることを決めたが、
彼女も汚職疑惑で投獄されて昔の輝きはない。30日の立
候補締め切りの数日前の世論調査では、ポロシェンコが
が8.2%だった。
ただ、元々民族派であって親欧米路線とは相容れない
チャグニボクらがこのままおとなしくしているわけがな
く、すでに新政権と「右派セクター」との軋轢も始まっ
ている中で、そこがヌランド・シナリオの思わぬ落し穴
にならないか、不気味である。
●NATO東方拡大の終点
してから20年という物差しの当て方についても、付け加
えておく必要がある。
シャワ条約機構という巨大な軍事同盟機構の対決構図は
無用のものとなり、理論的には双方ともそれを解消し
て、欧州のすべての国々が加盟する「全欧安保協力機構
(OSCE)」による集団安全保障体制に置き換えられるは
ずで、ゴルバチョフのロシアはさっさとワ機構を解散し
た。が、米国はそうは考えず、今後とも欧州での覇権を
維持しようとNATOの存続を強く主張したばかりでなく、
いく方針をとった。独仏はじめ大陸欧州は当初、それに
は懐疑的で、共通の敵がいなくなったのに何のための軍
事同盟なのかと米国に問うた。米国は、確かに欧州で大
規模戦争が起きる可能性は基本的に消滅したが混乱が続
く中・東欧で何が起きるか分からないし、その東のイス
ラム圏でも米欧が結束して当たらなければならない出来
事があるかもしれないではないかと説得した。欧州は東
方拡大にはなおさらためらいがあったが、米国はロシア
が弱り切っている今こそチャンスだと押し切り、94年1
月のNATO首脳会議で拡大方針を決め、その後、周知のよ
リーの3カ国、04年に第2陣としてバルト3国、スロバ
せてきた。
その間、94年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争介入、
ン戦争への有志参加など、NATOの域外共同作戦も活発に
なった。が、欧州は一貫してNATOの拡大がロシアを刺激
して冷戦に逆戻りしないかと心配して慎重姿勢をとり、
「平和のためのパートナーシップ」の呼びかけ(94年)
とか「NATOロシア理事会」創設によるロシアの準加盟国
扱い(02年)とかの枠組みを作ってロシアをなだめよう
たコンスタンツァ軍港を米地中海艦隊の拠点とし、また
その近くのコガルニセアヌ空港の共同使用権も得てそこ
をアフガン戦争向けの物資輸送基地としたばかりか、ミ
サイル基地の建設にも乗り出した。また隣のブルガリア
ウクライナと国境を接しているし、バルト3国のうちエ
ストニアとラトビアはロシアと直接国境を隔てていて、
ってくる。次はウクライナか?」と危機感を抱いたのも
当然だった。
米政府がそんなことを公言するはずもないが、ネオコ
ンのターゲットは明らかにその他の旧ソ連邦傘下の国々
をも次々に“民主化”して、ロシアを素っ裸にさせるこ
ゼ政権を崩壊させたのも、04年のウクライナ「オレンジ
革命」でティモシェンコ政権を作ったのも、05年のキル
ギス「チュリップ革命」で独裁者アカエフを追放したの
も、みなネオコンの介入・支援によるもので、彼ら
の“世界革命”路線の一環だったと言える。
正面からはNATOの東方拡大で圧力を強め、裏では各国
転覆を仕掛けるというこの壮大な計画が、ついに20年が
かりでウクライナにまで到達したというのが、今日の事
態の一面である。
繰り返すが、だからプーチンは悪くないということを
言いたいのではない。ロシア側から見れば20年がかりで
米国によって作り出されたこの事態はどう見えているだ
ろうかという想像力を働かせないと、この難局の打開策
は見えてこないということを指摘しただけである。
ウクライナを語るには、本当は、さらに長い長い物差
しも必要である。東スラブ人の最初の国家キエフ・ルー
シから1100年、モンゴル支配から770 年、コサック国家
でようやく独立を遂げて22年、等々がすべて今に繋がっ
ている。それをすべて語り尽くすゆとりもないので、私
が独立直後のウクライナを取材に訪れて本誌に書いた記
事を次に再録する。お暇な方は読んで頂きたい。▲
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