脇田 滋(龍谷大学教授):労働者派遣法改定の意義と法見直しに向けた検討課題 日本労働法学会誌 2000 p.71~90

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労働者派遣法改定の意義と法見直しに向けた検討課題

掲載誌 日本労働法学会誌 / 日本労働法学会 編 (96) 2000 p.71~90

 

 

一. 労働者派遣法施行と法運用の現実

 

1.1985年労働者派遣法制定

 

労働者派遣は、労働者派遣法(正式名「労働者派遣事業の適性な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等関する法律」1985年法律88号)によって初めて法認された新たな雇用形態である。

 

1985年7月可決・成立した。

1986年7月に施行された。

 

2.85年労働者派遣法の基本的性格

 

(1)対抗的政策立法

 

まず、労働者派遣制度導入は労働側が一致して反対したように、ひたすら経営側の要望に応えるものであった。当時の狙いは、直接には、

① 業務処理請負形式での違法派遣に対する職業安定法違反摘発闘争への対処、

② 国際的な男女平等要求に直面して「性別差別」の「雇用形態差別」へのすり替え、

③ 情報処理労働者の職種別労働組合組織化への警戒(経済同友会の中間労働市場論)

など)にあった。

 

(2)世界で最も貧弱な労働者保護措置

 

85年派遣法は、これら労働者保護の実効的規制がほとんどない点で、「世界で最も貧弱な労働者派遣法」であったと言える。

 

 

3.労働者派遣法運用の現実 派遣労働者の無権利

 

(1)違法派遣の横行

(2)登録型派遣労働者の無権利

(3)派遣先の横暴・差別

 

要するに、日本への労働者派遣制度導入は、(略)、雇用や労働者権の基盤全体を崩壊させる点できわめて重大かつ深刻な意味をもつものであった。

 

(4)同一労働差別待遇、低い労働条件、不安定雇用

(5)女性労働者を「非正規雇用」へ

 

85年当時、国連「女子差別撤廃条例」批准が日本で大きな課題となっていたが、同年に、男女雇用機会均等法が労働者派遣法と並んで国会に提出された。

性労働者の権利拡大や平等実現を回避し、性差別を雇用形態差別に置き換えることが企図されたと考えられる。

すなわち、均等法の雇用指針では、「総合職」「一般職」などの複線型コースは男女差別とならないとされたが、さらに、女性労働者を派遣社員化すること、つまり「派遣職コース」が構想され、均等法成立と密生な関連性をもって派遣法が同時に成立したと位置付ける必要があろう。

 

(6) 団結権・団体交渉権を利用できない

 

憲法上の団結権保障にもかかわらず、世界のなかで日本ほど団結活動から疎外されている派遣労働者は存在しないと言えよう。

 

二.99年新派遣法制定の狙いと雇用破壊

1.新派遣法制定の概要と背景

(1)規制緩和立法としての派遣法

 

財界は、高度経済成長を支えた「終審・長期雇用」「年功的処遇」「企業別労働組合」などを軸とする日本的雇用慣行を廃棄し、二十一世紀には、有期雇用や間接雇用を中心した多様な雇用形態の活用を中心とし、現在の正社員雇用を非正規雇用に転換することを宣言したのである。

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高梨昌 編『人材派遣の活用法』(東洋経済新報社、1997年)
三浦和夫『派遣社員活用の実際』(日本経済新聞社、1999年)

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http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/hkngak00.pdf

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