除去土壌と焼却灰/最終処分量2.7万m3に減容化
【除染・廃棄物協議会WGが試算/熱処理技術など組み合わせ】
 除染・廃棄物技術協議会の減容・再生利用ワーキンググループ(WG)は12日、中間貯蔵施設(福島県双葉、大熊両町)で保管する最大約2200万m3の東京電力福島第一原子力発電所事故後の除染で出た福島県内の除去土壌と焼却灰が、処理技術を組み合わせることで、最終処分量を2万7000m3まで減容化することが可能だとする試算結果を明らかにした。環境省が2015年度に複数パターンで試算したうちの再生資材の放射能濃度が1㎞当たり8000ベクレル以下の場合における、最終処分量4万m3より減らせるとの結果が出た。 =関連2面
 WGの試算は、再生資材の放射能濃度を1㎏当たり8000ベクレル以下に設定するなどの前提条件を置いた。化学処理や新技術を試算できる技術が現状ないことから、分級処理後の土壌処理は熱処理に限定したことなどが環境省の試算とは異なる。これに分級処理、熱処理、洗浄処理それぞれに処理対象の土壌量などを設定し、一定の条件を置いて試算した。
 減容化がないと、1㎞当たり8000ベクレル以下の処理せずそのまま再生資材となる土壌も含んだ土壌が973万m3、同8000ベクレル超−2万ベクレル以下の土壌が617万m3、同2万ベクレル超−8万ベクレル以下の土壌が371万m3、同8万ベクレル超の土壌が10万m3、同8000ベクレル超の焼却灰が155万m3の計2126万m3が最終処分量となる。
 これをベースに試算結果をみると、異物除去と焼却処理によって最終処分量は537万m3に減り、分級処理を加えると482万m3となる。さらに熱処理も組み合わせると、最終処分量が21万−170万m3にまで減る。洗浄処理まで実施すると、土壌と焼却灰の最終処分量は2万7000m3にまで減容化する。
 協議会のWGは、最終処分量を大きく減容化するには、異物除去によって、あらかじめ大塊物や金属ガラ、有機物などを除去しておくことが、分級処理や熱処理の後工程で重要になると指摘している。また、洗浄処理後の残さは可溶性塩分が除かれ、カルシウムやケイ素を多く含むため、熱処理での添加剤の一部代替としても利用可能などとした。
 ただ、分級処理による除去土壌の再生利用だけでなく、濃度が高い除去土壌も分級処理に加えて高度処理したり、焼却灰を熱処理、洗浄処理する技術の組み合わせは、コストがかかる。
 協議会WGの試算結果は、12日に環境省が開いた福島県外最終処分に向けた「中間貯蔵除去土壌などの減容・再生利用技術開発戦略検討会」の中で示した。
■除染・廃棄物技術協議会減容・再生利用WG
 除染・廃棄物技術協議会は、2011年11月に、東京電力福島第一原子力発電所事故からの環境回復における企業の社会的責任の一環として、産業界が除染や廃棄物処理・処分で主体的役割を果たすため、東京電力(現東京電力ホールディングス)を発起人として設立。現在は、鹿島、大成建設、アトックス、東京パワーテクノロジー、DOWAエコシステム、日本ガイシの幹事企業6社と一般会員68社で活動中。
 活動は自由意思で参加した企業で構成するワーキンググループ(WG)が中心。これまで除染効果を測る放射線計測方法などをWGのテーマに取り上げてきた。
 減容・再生利用WGは、日本ガイシをリーダーに、鴻池組清水建設太平洋セメント、JFEエンジニアリングの4社のサブリーダーと28社のメンバー企業で構成する。
 28社は旭化成ジオテック、安藤ハザマ、エヌエス環境、奥村組大林組、環境管理センター、クボタ環境サービス、佐藤工業神鋼環境ソリューション、新日鉄住金エンジニアリング竹中工務店、竹中土木、千代田テクノル、東亜建設工業戸田建設西松建設日揮日立製作所日立造船、ポニー工業、前田建設三井住友建設三菱マテリアルりんかい日産建設、鹿島、大成建設、DOWAエコシステム、東京電力ホールディングス。
[ 2016-12-13 1面]