1.1ベクレル/kg と免疫不全症状

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2013/11/21 山本太郎議員「1.1ベクレルと聞いて背筋が凍った」 〜タチアナ女史が語る、低線量汚染地域の健康被害


 ウクライナから来日中のタチアナ・アンドロシェンコ氏が21日、衆議院第一議員会館で講演を行い、2012年の11月から2013年3月まで行なわれた低線量被曝に関する実証実験プロジェクトについて報告した。

 このプロジェクトは、空間線量が1mSv以下という低線量汚染地域の住民が、頭痛や鼻血、関節痛や皮膚疾患、神経障害などといった症状を訴えるケースが相次いでいることから、ウクライナのコヴァリン村の9家族(※)を対象に、150日間の食事療法を行い、健康状態の経過を観察するというもの。約5ヶ月間にわたるプロジェクト実施後、ほぼすべての子どもと大人の体調が改善したことにより、これまで人体に影響が出るとされていた放射線量より低レベルでも、健康に被害を及ぼすことを実証したプロジェクトとなった。


(※ 9家族のうち8家族は、チェルノブイリ原発から35km圏内にあるノーヴィーミール村に事故後6年間居住し、1992年にコヴァリン村に移住している)

低汚染の内部被曝でも健康被害はある

 症状の発症原因は、内部被曝による影響が大きいと考えられるが、住民が口にする食材を衛生研究所で検査したところ、5ー10ベクレル/kg程度と推定され、これは食品ごとに設定されたウクライナ基準をすべてクリアしており、高い数値を示したのは、200ベクレルのキノコや8ベクレルの川魚のみ。これらを食生活から取り除くことに加え、住民たちは150日間、より汚染の少ない肉や牛乳を摂取し続けた。

 その結果、頭痛、発熱、鼻血に悩まされていた15才のナスチャさんは、幼少時代から心臓の痛みも訴えていたが、プロジェクト実施後、心臓の痛みは減り、鼻血も出なくなったという。

 タチアナ氏の家族もこのプロジェクトに参加したが、長女のカーチャさんの場合、冬になると毎年風邪をひき、仕事を長期に休むほどの高熱に悩まされていたが、プロジェクト後に迎えた冬は初めて、喉が痛い程度でおさまったという。日常的に鼻血を出していた14才の三女、オリガさんについても、鼻血の頻度が一ヶ月に1回程度に軽減され、3才から抱えていた胃炎も改善した。

 そのほかの対象者についても、タチアナ氏は改善の度合いを丁寧に説明し、いかに食事療法によって個々の症状が回復したかを報告した。氏は、ウクライナに戻った後もこのプロジェクトを継続していく予定だという。

「世界で初めてのプロジェクトになった」

 放射線被曝による健康被害はもちろん癌だけではない。日本国内でも、福島原発事故後、倦怠感や鼻血、風邪をひきやすくなったなどの自覚症状が報告されているが、事故による放射線被曝との因果関係は議論さえされていないのが現状だ。

 このプロジェクトのために基金を提供し、独自の現地調査も行った、「食品と暮らしの安全基金」の小若順一代表は、「低レベルの内部被曝でも、健康障害が出ることを初めて実証した、世界で初のプロジェクトではないか」と語っている。

 小若氏は、内部被曝による健康被害しきい値を突き止めるため、低線量汚染地域の中でも、頭痛や関節痛といった症状を訴える子どもたちの数が圧倒的に多い地域で、子どもたちの1日分の食事を検査した。その結果、小若氏は1kgあたり1.1ベクレルという数値が、健康に被害を及ぼす最低値であることを発見したという。

 現在、日本の一般食品安全基準は、1kgあたり100ベクレルであるが、今回のプロジェクトの結果により小若氏は、日本も1ベクレルを食品基準にするべきだと訴えている。

 第二部のシンポジウムに登壇した山本太郎参議院議員も1.1ベクレルという調査結果について、「この数字を聞いて背筋が凍った。前例から学ばなければいけないのは明らかだ」と危機感をあらわにした。(IWJ・ぎぎまき)