放射性セシウム137の減り具合をグラフにしてみる

1キューリーは何ベクレルか?
これをちゃんと計算してみます。

【対象:高校生の数学レベル。対数の話が出てきます。最後の問いは高校生の物理学レベル。アボガドロ数が出てきます。】

まず、半減期で半分になる。
この式を出してみます。

■グラフを作る

半減期:半分になる時間=T0 とします。

最初に原子が N 個
半分で    N/2個
更に半分で  N/4個


これを次の式にします。
 n = N0 * K
Kは、
T0 : 1.0
T0*2: 0.5
T0*3: 0.25
T0*4: 0.125

この X軸にt
Y軸に K をプロットすると。。

Fig1:半減期(T0)で半分、半減期の2倍(T0*2)で1/4のグラフ

■片方(Y軸)を対数軸にする

半分、半分、半分、こういう時には対数を使うと簡単になる。
「2を底にする対数」にすると簡単だ。
log(2)
普通logは、10を底にする関数でlog(10)だけど、省略してlogとかく。
で2を底にする対数ってのは、
log(2)2=1
log(2)4=2
log(2)8=3
2のベキ乗のちょうど逆の関係。
2^1=2
2^2=4
2^3=8

1より小さい方は、
log(2)1=0
log(2)0.5= −1
log(2)0.25= −2
log(2)0.125= −3
なので、
さっきのグラフは、縦軸(Y軸)のみを2を底にする対数の軸にすると、


Fig2 Y軸を2を底にする対数軸にしたグラフ

そう、簡単な右下に下がる直線になる!
こうすれば、グラフの式を求めるのは簡単だ。中学で習う直線の式だ。

y = ax + b
a:傾き
b:y切片

x,y = 0,0 を通るので、簡単な y = ax の式。
時間 T0にて、logK=-1なので、
式:y = -(1/T0)*x
よって、

log(2)K = −x/T0

片対数を元に戻す。

 K = 2 ^ ( -x/T0 )

最初に有る原子の数を N0とすれば、

 ある時刻 t (X軸を時間の意味を表すtに変える)
に残っている原子の数 n は、次の式で表される。

 n = N0 * K

  = N0 * 2 ^ ( - t /T0 )

■1秒後には幾つになるのか?
さてでは、いよいよ、1キューリーの定義の数字を求めてみよう。

測定開始の時に N0個あった原子は、1秒後に、幾つになるか。

 n = N0 * 2 ^ ( - t /T0 )

答えは、

 最初:N0個
 1秒後:N0 * 2 ^ ( - 1/T0)

1秒間に核崩壊する数を求めると、

 Δn = N0 − N0 * 2 ^ ( - 1/T0)
 Δn = N0 *( 1 - 2 ^ ( - 1 / T0 ) )

これが求める式だ。お疲れ。

■おまけ Cs137の減衰カーブ

Mac OS X に Grapherという無償アプリが入っている。
式を入れると図を作ってくれる。

K = 2 ^ ( -x/T0 )

これを書いてみた。

T0_Cs137: 30年
T0_I131: 8年
T0_Ra226: 1600年
だそうだ。

30年をそのまま入力すると横軸が大きすぎるので、1/100で入力してある。よって、横軸は、100倍して年に換算して見てください。




■1キューリーは何ベクレルか?
昨日の記事:
http://d.hatena.ne.jp/scanner/20110908/1315455481

では、えいや!で計算した数字を今日求めた式を使って、きちんと求めてみます。

Q:1キューリーは何ベクレル?

ラジウム1グラムの放射能を1キューリー」(キューリーの定義)

「1モルの ラジウムは原子量の 226グラム」(物理学)

「1モルの 原子数は 6.02 * 10^23ケ」(物理学:アボガドロ数

ラジウム半減期は1600年(核崩壊で半分に)」(物理学)

以上から、

1600年は、5.0 * 10^10秒

1秒に何個ラジウムが核崩壊するか? の計算は、

N0 ラジウム1グラムあたりの個数: 

 = (6.02 * 10^23)/226 = 2.664 * 10^21

1秒間に核崩壊する数は、さっき求めた式:

 Δn = N0 *( 1 - 2 ^ ( - 1 / T0 ) )

= (2.664 * 10^21)/( 1-2^(-1/5.0 * 10^10))

= 3.66 * 10^10 Bq
= 36.6 * 10^9 Bq
= 36.6 GBq

ということで、
A:1キューリーってのは、37ギガベクレルだ。

■応用問題:

Q2:チェルノブイリ 強制(義務的)移住ゾーンは何ベクレルか?


http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No102/imanaka060414.pdf
第102回原子力安全問題ゼミ
2006.4.14
チェルノブイリ20年:事故の経過、汚染、被曝、影響
今中哲二@京都大学原子炉実験所

表2より

>40 Ci/km^2:強制避難ゾーン
15~40 Ci/km^2:強制(義務的)移住ゾーン
5~15 Ci/km^2:希望すれば移住が認められるゾーン
1~5 Ci/km^2 : 放射能管理が必要なゾーン

A2:答え