尖閣諸島:日本は「専守防衛権」さえ行使できない。米国は手を出せない。



入口 紀男

尖閣諸島」に中国は「国連憲章第53条」を持ち出す 
              
 中国は、2014年12月28日に尖閣諸島上空の「防空識別圏」を解除しました。日本の「棚上げ隠し持ち事件」(2014年発覚。コメント欄参照)によって、中国は圧倒的に有利となったからです。

 この状態で、日本が尖閣諸島を武力で制圧すると、中国は国際社会に対して日本によって「侵略された」と主張できるでしょう。これは日本が尖閣諸島について「専守防衛権」さえ行使できない(尖閣諸島はすでに失われている)ことを意味します。

 中国は必ず「国連憲章第53条」を持ち出すでしょう。
「日本が第二次世界大戦により確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こしたりした場合、加盟国は安保理の許可がなくとも、日本に対して軍事的制裁を課すことが容認され、この行為は制止できない」(国連憲章第53条)

 米国も手を出せないでしょう。この「国連憲章」が「日米安全保障条約」よりも上位にあるからです。

入口 紀男
2010年9月7日に「中国漁船衝突事件」が起きました。

日本政府は2012年9月11日に尖閣諸島を国有化しました。

中国は2013年11月23日に尖閣諸島の上空を自国の「防空識別圏」に含めました。

日本にとって厄介な問題は、日本が一貫して「棚上げの約束はなく、棚上げすべき問題がそもそも存在しない」(棚上げ不在論)と主張してきたことにあります。

2014年12月30日にロンドン発共同通信は、「英公文書」が公開されて1982年9月に鈴木首相が英サッチャー首相に対して棚上げの存在を「自白」していたことを報道しました。「英公文書」は国際社会では第三者的な「証言」としての意味を持ちます。

日本が「棚上げを隠し持って」いたことは信義(「禁反言」の国際慣行)に反する行為です。

中国漁船衝突事件」(2010年)が「民間」レベルの事件であったのに対して、「棚上げ隠し持ち事件」(2014年発覚)は、「国家間」の事件です。

国際社会の共通認識は「日本と中国がそれぞれ申し立てる歴史上の真偽が如何ほどかは知らないが、日本が国有化しておいて、アレはウソだがコレはホントだと言っていることだけは事実だ」でしょう。

日本の「棚上げ隠し持ち事件」(2014年発覚)によって中国は圧倒的に有利となっています。

なお、尖閣諸島が日本に属するかどうかを決める権原(権限?)は日本にはなく、ポツダム宣言までさかのぼって米・英・中が決めます。

「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」(ポツダム宣言第8条)日本はそのポツダム宣言を受諾しているからです。