大気中ラドンの濃度変動と地震


http://www.nirs.go.jp/information/press/2006/index.php?01_16.shtml

兵庫県南部地震前に大気中ラドンの濃度変動を観測
臨界現象数理モデルへ適用し地震予知に活用も

独立行政法人 放射線医学総合研究所(米倉義晴理事長)放射線防護研究センター環境放射線影響研究グループ自然放射線被ばく研究チームの石川徹夫主任研究員らは、神戸薬科大学放射線管理室の安岡由美助手、東北大学地震・噴火予知研究観測センターの五十嵐丈二教授(故人)らとの共同研究により、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震の前に異常な上昇を実測した大気中ラドン(222Rn)*1濃度を解析し、数理モデル*2への適用に成功しました。

地震発生前から定期的に大気中のラドン濃度を測定していた神戸薬科大学は、兵庫県南部地震の断層近傍にあり、六甲山麓に位置しています。同地点の地層は花崗岩からなり、ラドンが多く含まれていることが知られていました。大気中のラドン濃度の異常な上昇は、地震前に地殻にかかった応力に伴ってできた岩石中のマイクロクラック*3等により、ラドンが断層などの割れ目に沿って上昇し、地面からのラドンの散逸量が増加したと考えられます。

これまで、地震の前に地下水中のラドン濃度が変動した報告はいくつかなされており、兵庫県南部地震の前にも地下水中のラドン濃度の上昇やCl-イオン変動*4が生じたことが報告されていますが、大気中で実測したラドン濃度の変動を解析し、地震前にかかった応力の状態を理論式に適用させることができた例はなく、地震のメカニズム解明に寄与する新たな研究として注目されます。