映画 医(いや)す者として


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湯浅誠反貧困ネットワーク事務局長)
若月さんは医者には「二足のわらじ」が必要だと言ったという。高度医療と地域医療の両立だ。
それは「魅せる医療」と「見せる医療」の両立だ、とも言い換えられるのではないか。
映画を見て、私はそのような感想をもった。
「魅せる医療」は、高度な技術で疾患を治癒する。それは患者を感嘆させ、畏怖させるだろう。
他方「見せる医療」は、治療とは異なる場面で、人々の日常に生活に入り込み、
医療を医者をさらす、開く、医療。巡回診療、寝たままの患者会、公開手術、病院まつり…。
佐久病院の活動の歴史は見ようによっては「かなりむちゃくちゃ」だ。
しかしそれが、地域の人々が自らを医療に対して開くことを可能にした。
映画後半、医療スタッフはその両立の困難さに苦悩する。機能分化を受け入れつつ、
いかに機能間連携を進めるか。それは他分野にいる私たちの課題でもある。
私たちは改めて「いま、本人に、地域に、社会に、見せる」ということがどういうことなのかを考え、
試行錯誤を繰り返すしかない。
佐久病院の実践と若月氏の言葉は、その試行錯誤を生きる者たちに示唆を与え続けるだろう。