http://iyasu-mono.com/comment/●湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長)
若月さんは医者には「二足のわらじ」が必要だと言ったという。高度医療と地域医療の両立だ。 それは「魅せる医療」と「見せる医療」の両立だ、とも言い換えられるのではないか。 映画を見て、私はそのような感想をもった。 「魅せる医療」は、高度な技術で疾患を治癒する。それは患者を感嘆させ、畏怖させるだろう。 他方「見せる医療」は、治療とは異なる場面で、人々の日常に生活に入り込み、 医療を医者をさらす、開く、医療。巡回診療、寝たままの患者会、公開手術、病院まつり…。 佐久病院の活動の歴史は見ようによっては「かなりむちゃくちゃ」だ。 しかしそれが、地域の人々が自らを医療に対して開くことを可能にした。 映画後半、医療スタッフはその両立の困難さに苦悩する。機能分化を受け入れつつ、 いかに機能間連携を進めるか。それは他分野にいる私たちの課題でもある。 私たちは改めて「いま、本人に、地域に、社会に、見せる」ということがどういうことなのかを考え、 試行錯誤を繰り返すしかない。 佐久病院の実践と若月氏の言葉は、その試行錯誤を生きる者たちに示唆を与え続けるだろう。