岩田健太郎・神戸大学教授 インタビュー:2020-4-23

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聞き手/ダイヤモンド編集部 津本朋子

インタビュー:2020-4-23

記事公開:2020-4-28, 05:20

抗体とは、感染した人の体内でできる、免疫グロブリンという、微生物を攻撃するタンパク質を指します。しかし、抗体ができるということと、免疫ができるということは必ずしもイコールではなく、しばしば抗体はできているのに免疫はできていない、という現象が発生します。

 

抗体があれば、「新型コロナに一度かかったことがある」ということはほぼ言えますが、「もう二度と新型コロナにはかからないお墨付きが得られる」ということには必ずしもならない。

 

例えば、はしかは抗体ができたら二度とかかりませんが、HIVは抗体ができたって体内からウイルスはなくなりません。よって、抗体ができた人が5~6割に達すれば、必ず集団免疫が獲得できる、という話にはならないのです。

 また、免疫ができた人でも、その状態が3カ月続くのか、1年なのか、一生なのかは、まだわかりません。

 

実現するかどうかもわからない集団免疫獲得を目標に据えて作戦を立てるというのは、非常にまずいです。

Q:ワクチンや治療薬については、どうお考えですか?

 

A:これも「できたらいいな」という話です。よくワクチンを作るのに十数カ月かかる、というような話が出ていますが、そもそもワクチンが作れない可能性だってあるんです。現に、HIVはもう40年間も研究していますが、いまだに成功していない。SARS(重症急性呼吸器症候群)のワクチンもありません。治療薬もパッとしないものばかり、という未来だって、あり得ます。

 

集団免疫もワクチンもダメで、治療薬もイマイチということになれば、空襲警報のようにロックダウンを繰り返す、という悲観的なシナリオもあり得る、ということです。つらいシナリオですが、目を背けるべきではありません。「絶対に大丈夫」というような安心材料は、少なくとも現段階ではないんですから。

 

昨日(4月22日)、政府は「人との接触を8割減らす、10のポイント」を発表しましたが、あんなのは複雑で覚えられません。単純に「外出はダメ」、そして、どうしても外出が必要な人――警察官や医者、看護師、救急隊員など――は、「人と2メートル以上距離を空ける」。ロックダウンに必要なのは、この2つだけで、非常にシンプルです。

 

法的に強制力がないなどと言っている場合ではなく、緊急事態なんだから、思い切った戦略に転換すべきです。