論文(2010年) 牛肉および癌組織のエストロゲン濃度ーホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生増加との関連ー 半田康、藤田博正、渡邊洋子、本間誠次郎、金内優典、加藤秀則、水上尚典、岸玲子

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10722771_po_ART0009500195.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

 

Japan Society of Obstetriscs and Gynecology

614(S-480) 一般演題 日産婦誌62巻2号

 

K3-4 牛肉および癌組織のエストロゲン濃度ーホルモン剤使用牛肉の摂取とホルモン依存性癌発生増加との関連ー

 

北海道大公衆衛生1)、北海道対がん協会2)、あすか制約メディカル開発研究部3)、北海道大4)、国立病院機構北海道がんセンター5)

半田康1)、藤田博正2)、渡邊洋子3)、本間誠次郎4)、金内優典4)、加藤秀則5)、水上尚典4)、岸玲子1)

 

【目的】ホルモン依存性癌は年々増加している。このうち子宮体癌、卵巣癌は近年25年間で8倍、4倍に増加した。その間、食の欧米化により牛肉消費量は5倍に達し、ホルモン依存性癌の増加に似た増加をしている。国内牛肉消費量の25%をアメリカ牛肉が占めるが、アメリカでは Estradiol 17β を含むホルモン剤(デポー剤)の投与が牛肉へ成長促進目的に行われている。牛肉のホルモン依存性癌への関連を検討した。

 

【方法】牛肉脂肪(アメリカ産、国産:n=40,40)、牛肉赤身(アメリカ産、国産:n=30,30)、および、ヒト癌組織(子宮体癌、卵巣癌:n=50,50)、ヒト正常組織(子宮内膜、卵巣:n=25,25)に含まれる  Estradiol 17β (E2) と Estrone (E1) の濃度をLC-MS/MS (測定限界:E2 0.1pg, E1 0.5pg)で定量した。ヒト組織を用いた研究については被験者の同意と倫理委員会の承認を得た。

 

【成績】アメリカ産牛肉の E2,E1濃度は国産牛肉よりも顕著に高かった。特にアメリカ産牛肉の E2濃度は、脂肪で国産の140倍、赤身で国産の約600倍と極めて高濃度だった。国産牛肉では半数以上の検体が E2, E1濃度とともに測定限界以下だった。子宮体癌組織の E2, E1濃度は正常内膜に比べて進行期 Ⅰ期で高く、Ⅲ-Ⅳ 期で低かった。卵巣癌でも同様でⅠ期が最も高濃度だった。

 

【結論】アメリカ産牛肉は国産牛肉に比べて非常に高濃度のエストロゲンを含有している。一方、組織中のエストロゲン濃度の情報は子宮体癌、卵巣癌の発生初期に関与していると想定される。したがって、ホルモン剤使用牛肉の摂取量の増加は、ヒトの体内へのエストロゲンの蓄積、濃度上昇を促し、ホルモン依存性癌の発生増加に関連する可能性があると推測される。
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http://www.jsog-oj.jp/tocTo63.php?-DB=jsog&-LAYOUT=to63&volume=62&issue=2&-sortfieldone=order

日本産婦人科学会雑誌 (2010年)第62巻 第2号 目次


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内閣府 食品安全委員会 より。

牛の成長促進を目的として使用されているホルモン剤(肥育ホルモン剤

https://www.fsc.go.jp/topics/factsheet-cowhormone.pdf

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「肥育ホルモン剤には、ヒトや動物の体内に自然に存在するホルモンを製剤とした天然型と、(略)天然型のホルモン剤としては、17β- エストラジオール」

「2003年、EUはホルモン物質の使用及び輸入禁止に関する指令を改正し、17β- エストラジオールを永続的に使用禁止とし、」


1989 年の EC による肥育ホルモン剤を使用した牛肉等の輸入禁止を受けて、米国、カナダは、この輸入禁止 EC 産牛肉の保護にあたるとして関税と貿易に関する一般協定 (GATT)に提訴し、EC からの輸入品に対し報復措置を発動しました。


1999 年、WTO の紛争解決機関は米国、カナダによる対抗措置を認 めました。


2004 年、EU はリスク評価を実施し、関連の EU 指令の改正を行い、WTO の勧 告を履行したと報告


米国、カナダは、改正 された EU 指令は、科学的なものではなく


EU は、米国、カナダの対抗措置を WTO に提訴し ました。2005 年、EU の要請によりパネルが設置され、現在も議論は継続