誰も言わないけれど戦争にはこれだけカネがかかる

誰も言わないけれど戦争にはこれだけカネがかかる http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47482 @JBpressより


日清戦争の戦費は、当時の金額で約2億3000万円、初の近代戦となった日露戦争の戦費は約18億3000万円だった。

日清戦争開戦当時のGDP(当時はGNP)は13億4000万円だったので、戦費総額のGDP比は0.17倍である。現在の日本のGDPは約500兆円なので、単純に0.17倍という数字を当てはめると85兆円という金額になる。現在の国家予算(一般会計)は約100兆円なので、国家予算に匹敵する金額を1つの戦争に投じた計算だ。

 一方、日露戦争当時のGDPは約30億円だったので、日露戦争における戦費総額のGDP比は0.6倍である。日露戦争の負担は日清戦争よりもはるかに大きく、現在の金額に当てはめると300兆円ということになる。

太平洋戦争(日中戦争を含む)の名目上の戦費総額は約7600億円。日中戦争開戦時のGDPは228億円なので、戦費総額のGDP比率を計算すると33倍になる。国家予算に対する比率では何と280倍という、まさに天文学的な数字である。

 また、旧日本軍はアジアの占領地域でかなり強引な戦費の調達を行っている。占領地域に国策金融機関を設立し、現地通貨や軍票(一種の約束手形)などを乱発した。

戦費総額が2000億円だとすると、GDPとの比率は約8.8倍に、国家予算との比率では74倍となる。
 先ほどの数字に比べればかなり小さくなったが、それでも現在の価値に置き換えれば4400兆円

日本は終戦後、財政破たんから準ハイパーインフレに陥り、最終的には預金封鎖によって国民から財産を強制徴収する形で埋め合わせが行われた。

米国における第2次世界大戦の戦費総額は約3000億ドル。開戦当時の米国のGDPは920億ドルなのでGDP比は3.2倍となる。

朝鮮戦争には、延べ570万人の兵力と300億ドルの経費を投入している。しかし期間が36カ月と比較的短期間だったこともあり、戦費はGDP比0.1倍という低い水準に収まった。

 泥沼の戦争と呼ばれ、米国衰退のきっかけになったとも言われるベトナム戦争も、経済的に見るとインパクトはそれほどでもない。延べ兵力は870万人、戦費総額は1100億ドルに達するが、戦費のGDP比は0.15倍であり、朝鮮戦争の1.5倍程度である。

イラク戦争になるとさらに負担は小さくなる。米国経済はレーガノミクス以降、めざましい成長を実現し、規模がさらに拡大した。イラク戦争の戦費総額は1兆370億ドル、延べ動員兵力は200万人と大規模だが、戦費のGDP比はわずか0.1倍である。

ロシアは、表の中ではもっとも国民生活に犠牲を強いて軍事費を捻出している国だが、それでもGDPに占める軍事費の割合は4.5%程度である。

 過去20年間、日本のGDPはほぼ横ばいだが、同じ期間で米国は2.4倍、ドイツは1.8倍、中国に至っては18.4倍に成長している。日本はバブル崩壊以後、グローバルな競争社会に背を向け、目先の安定を享受する代わりに成長を犠牲にする道を選択をしてきた。

もし日本が諸外国と同レベルの経済成長を実現し、国際的な平均水準であるGDP比2%を防衛費にかけていたと仮定すると、現在の防衛費は中国とほぼ同じ水準になる。日本人は、冷静にこの事実を理解しておく必要があるだろう。