英文記事「福島原発の規模は広島原爆の4023倍」は間違いです

ブログexaminerの英文記事「福島原発の規模は広島原爆の4023倍」
は間違いです。
論拠を下記にまとめてあります。
http://d.hatena.ne.jp/scanner/20120919/1348008687

経緯だけメモすると。
(1)東電発表。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1204619_1834.html
(2)東電発表を報じる読売新聞の英文記事。
http://www.yomiuri.co.jp/dy/national/T120523005514.htm

(リンク切れですね、補足しておきます。)
「It reached a final estimate of 400,000 terabecquerels of iodine-131 and 360,000 terabecquerels of cesium-137.」

(3)その記事(2)を読んで「勘違いした」市民記者Alexander Higginsのblog記事
http://www.examiner.com/article/fukushima-cesium-equals-4-023-hiroshima-bombs

原因は、読売新聞英文記事の誤記と、その誤記事を検証無しに誤解したまま記事にしたAlexander Higgings氏です。
読売新聞英文記事では、
「It reached a final estimate of 400,000 terabecquerels of iodine-131 and 360,000 terabecquerels of cesium-137.」
と書いてしまったけど、
「9000TBqの放射性セシウム137の放出量は、ヨウ素131換算で(40倍して)360,000TBqであった。」と書くべきでした。(TBqとはテラベクレルです。テラはギガの1000倍)
読売新聞の日本語の元記事を調べてみましたが、そちらでは、ヨウ素131換算である点をきちんと書いています。英文記事にした担当者のミスだと想われます。
更に私が問題だと想うのは、
(3)を読みAlexanderの誤解blog記事をtwitterで更に拡散する人、blogで更に拡散する人の存在です。
でもこの心理は理解はできなくも無いです。
311以降、「東京電力や政府の公式発表を基本的に信用していない。」「何かを隠しているんじゃいか。」という心理がこの現象を加速しているのだろうと私は見ています。
これからの時代、権威が発表する内容を始めから疑って掛かることは、私達がいままで訓練をされてこなかった、「情報リテラシー」の資質として重要だと想います。
ただし、それとセットで、情報源を自分の力で解釈し、正しい情報を吟味する力も重要だと想います。
何事もシェアする前に自分の目でチェック、ってことだと想います。

なぜ、わざわざ、「ヨウ素131換算で(40倍して)」なんてめんどくさいことするのか?
それは、複数種類の核種の影響を全部ひっくるめてひとつの数字にするためです。
福島原発事故チェルノブイリ事故と比較する際に、
福島原発の事故は、チェルノブイリと同じ、レベル7に達したことは日本人はみんな知ったけど、その比較方法まで知る人は少ない。
1つのモノサシで較べないとどっちが多い少ないと言えない。
放射性セシウムの量と放射性ヨウ素の量が原発の種類や事故の程度によって比率が全く異なる。
それらを全て同じ、比較するためのモノサシにのせなきゃならない。
その手段が、「放射性ヨウ素131に換算する」という方法(だそう)です。

放射性セシウム137は、放射性ヨウ素131換算では、40倍して計算に加える。

この部分の知識をAlexander氏が理解出来ていなかったために、読売新聞英文記事の誤記に気付くことができずに鵜呑みにした、っていう経緯です。

ちなみに、鹿児島の国会議員が、黒塗りの東電原発マニュアルを追求した際に、広島に落とされた原子爆弾東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故を比較し て倍率を出すように指示し、日本の国会で議論になった。その時の数字「福島原発事故の規模は、広島原発の168倍」という数字は、放射性セシウム137の みの比較です。
関連blog記事:
http://d.hatena.ne.jp/scanner/20110826/1314382382
2011-08-26
原子力安全・保安院 福島第一原子力発電所から放出された放射性物質に関する試算値 福島第一原発放出セシウムは、広島原爆の168倍


2012.6.21の記事
この記事を読めば、バイアスがかかる気持ちも理解できる。


http://d.hatena.ne.jp/scanner/20121102/1351824531
IAEAでは福島の事故が起こったので、レベル8を作る議論がされている。

■東電から発表されている数京ベクレルの放射能の放出の数字は、 
9割近くが2号炉のものだと認めている。 
3号炉の爆発は含んでいない。 
しかも、海に漏れた超高濃度排水も含んでいない。 
近寄れず計測できなかったと言い訳している。 
しかし報告書には「分かっている限りで」ときちんと明記されている。 
にもかかわらず、マスコミはその記載を無視し、 チェルノブイリは越えていないと報道している。